樋口真嗣監督『シン・ウルトラマン』を観てきました。
シリーズとして完璧な締めくくりを見せた『シン・エヴァンゲリオン』から1年余り。
コロナ禍による公開延期もあり、
今作を待ち望んだファンも多かったのではないでしょうか。
来年には『シン・仮面ライダー』の公開も予定されていて、
東宝、カラー、円谷プロダクション、東映の4社による
「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」も盛り上がりを見せていますね。
今回はそんな『シン・ウルトラマン』の感想を、
ウルトラマンシリーズ初心者からの目線で書いていきます。
※ネタバレを含む感想となります。
映画基本情報・あらすじ
まずは今作のあらすじです。
次々と巨大不明生物【禍威獣(カイジュウ)】があらわれ、その存在が日常となった日本。
通常兵器は全く役に立たず、限界を迎える日本政府は、
禍威獣対策のスペシャリストを集結し、
【禍威獣特設対策室】通称【禍特対(カトクタイ)】を設立。班長・田村君男(西島秀俊)、作戦立案担当官・神永新二(斎藤工)、
非粒子物理学者・滝 明久(有岡大貴)、汎用生物学者・船縁由美(早見あかり)が選ばれ、
任務に当たっていた。禍威獣の危機がせまる中、大気圏外から突如あらわれた銀色の巨人。
禍特対には、巨人対策のために分析官・浅見弘子(長澤まさみ)が新たに配属され、
神永とバディを組むことに。浅見による報告書に書かれていたのは・・・【ウルトラマン(仮称)、正体不明】。
Filmarksより
主要キャストには斎藤工、長澤まさみ、西島秀俊、早見あかり、有岡大貴らが名を連ねます。
上演時間は113分。
監督を樋口真嗣、総監修・脚本を庵野秀明が務めているほか、
米津玄師によるテーマ曲『M八七』も話題を読んでいます。
ほとばしるウルトラマン愛
さて、筆者にとってウルトラマンシリーズは、
子どものころにウルトラマンや怪獣たちのソフビを集めたりして、
非常にハマっていたものの1つ。
しかし、シリーズとしての知識などはほぼ無い状態で、
今回の『シン・ウルトラマン』も初心者として鑑賞しました。
その点では、今作はどちらかといえば、一般ウケというよりも、
ウルトラマンシリーズのファンに向けた作りになっていると感じました。
シリーズのファンが思わずニヤニヤしてしまうであろう
オマージュ・小ネタが数多く仕込まれており、
例えば映画オープニングでは、
『ウルトラQ』から『ウルトラマン』へのタイトル変化をオマージュしていましたね。
ですが、正直そのオマージュ・小ネタに気が付かずとも、
禍威獣とウルトラマンとの対決の迫力は十二分に伝わってきました。
ウルトラマンの肌の質感とか、スペシウム光線の質感もそうですし、
回転して相手を蹴り上げるシーンの動きとかも非常に楽しめました。
邦画のCG表現としてはかなりレベルの高い水準だったと思います。
ウルトラマンシリーズの一番の魅力である怪獣たちとのバトル、
この部分がしっかり楽しめるものだったのが大きかったです。
ザラブとのバトルで都市上空をギュンギュン空を飛び回るシーンとか、
宇宙空間に鎮座する超巨大なゼットンの絶望感も最高でした。
もう単純に、「ウルトラマンすげー!」となってました。
ウルトラマンのバトルが好きだ!という、
制作陣のウルトラマン愛が随所で感じられる作品でしたね。
『シン・ゴジラ』のカタルシスには及ばない
一方、映画観賞中に感じたのが、
映画の展開に置いていかれている感覚でした。
禍特対と禍威獣ネロンガとの闘いのなかでウルトラマンが登場し、
ガボラとの闘いでウルトラマンと禍特対がコミュニケーションを取る。
そこの流れまではついていけたのですが、
メフィラス星人のパートが始まると徐々に設定が先行していきます。
さらに、禍威獣たちや外星人のエピソードが
1つずつ展開されていくぶつ切り感も合わさって、
やや展開についていくのが大変な状態でした。
そのため、ところどころで作品への没入感が削がれてしまう感覚がありました。
今作のそうしたテンポ感のなかで、
それぞれの登場人物たちのキャラクターの深まりが不足しており、
ラストのウルトラマンと人間の共闘の「カタルシス」が今一つに感じられました。
『シン・ゴジラ』と比較したときに物足りなかったのが、
この「カタルシス」の部分でした。
今作でも一応、人間たちの英知を終結し、
ゼットン攻略方法を発見するくだりがありましたが、
人間たちが存亡をかけて全力を投じる演出がもっと欲しかったです。
エヴァンゲリオンのヤシマ作戦で日本中の電力を集めたような、
シン・ゴジラのヤシオリ作戦でありとあらゆる手を尽くしたような、
人間の勢力が結集していく様があればと思いました。
ウルトラマンが自らの命を賭して人間という種族を守ろうとする、
その価値が人間にもあるのか?
今作のテーマにも関わってくる部分なだけに、
キャラクターへの感情移入や「カタルシス」の部分で
若干の物足りなさを感じてしまいました。
神永とゾフィーのスケール感に痺れる
神永の命を結果的に奪ってしまったことから、
人間の自己犠牲の精神に興味を持ち、
人類を守る戦いに挑んだウルトラマン。
一方、ザラブやメフィラスといった外星人たちは、
人間を守るべき価値のある生命とは考えていません。
光の星の「裁定者」ゾーフィも、(ナウシカの「オーマ」を連想させます)
宇宙にとって脅威となりうる、
いわば害虫として人間を駆除することを使命として地球に訪れます。
ウルトラマンは自分の母星までも敵に回して人類を守ろうとしますが、
人類の頭上を通り越して人類の存続が決められていく感じが、
非常に宇宙的なスケールを感じさせて面白かったです。
世界魚バハムートに関するこんな記述とか、
バハムートの巨躯は、全世界の海洋をその鼻孔に入れても、
砂漠に置かれた芥子粒ほどしかならない。
クトゥルフ神話とか、そのあたりに近い気が遠くなるスケール感が楽しめました。
また、上位存在による考えですべてを決めてしまってもいいのか?
人間も自身の都合で生物を駆除することがありますが、
そうした姿勢へ疑問を投げかけるようなメッセージになっています。
山本耕史のメフィラス星人
さて、キャラクターへの感情移入がしにくい部分があると書きました。
そんな中で、ひときわ魅力的な存在感を放っていたのが、
山本耕史を演じるメフィラス星人でした。
彼は自身の目的のために人類を管理しようとする「悪質宇宙人」なのですが、
そのすべての言動が超胡散臭い。
そのあまりに胡散臭いキャラクターが、
山本耕史という俳優のイメージにドはまりしていました。
「私の好きな言葉です」
こういう腹に一物ある「いい人風」な人を演じさせたら、
山本耕史の右に出るものはいないでしょう。
公園で神永と語るシーン、居酒屋でのシーンなど、
今作のドラマパートで一番楽しめたところでした。
今作の山本耕史のメフィラス星人は後にも語り継がれる名演です。
最後に
『シン・ウルトラマン』は長澤まさみの映し方など
ノイズになってしまう部分もありますが、
特撮娯楽映画としては非常に楽しく観られる映画でした。
巨大・長澤まさみのシーンはかなりインパクトがありました。
国際政治劇と特撮作品としてのリアリティラインのかみ合わせが
微妙に悪かったのはありますが、
細かいことは気にしなければ楽しめる作品だったとも思います。
来年公開予定の『シン・仮面ライダー』への期待も高まりますね。
ぜひ楽しみにしたいと思います。
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『シン・ゴジラ』(2016)
現代日本に初めてゴジラが現れた時、日本人はどう立ち向かうのか?
Filmarksより
『ミスト』 (2007)
『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』のフランク・ダラボン監督がスティーヴン・キングの小説を映画化。霧の中に潜む謎の生物に追いつめられ、常軌を逸し、やがて極限状態に陥っていく姿を描いたパニック・ミステリー。
Filmarksより
『グエムル-漢江の怪物-』 (2006)
漢江から突如上陸した黒い両生類のような怪物(グエムル)は、河原の人々を捕食殺害し、露店の男カンドゥ(ソン・ガンホ)の娘、ヒョンソ(コ・アソン)を捕まえて水中へ消えた。ヒョンソは怪物の巣の下水道から携帯電話で助けを呼ぶ。一方、在韓米軍は怪物は未知の病原菌を持ち、感染したとみられるカンドゥを捕えようとする。カンドゥと一家はヒョンソを救う為に追われながら怪物を探す。
Wikiより
こちらのシンジについても書いています。
『劇場版 呪術廻戦0』 映画感想・伊藤潤二『うずまき』作品紹介 ※ネタバレあり