アル・パチーノ代表作『スカーフェイス』
『スカーフェイス』は1983年に公開された、
ブライアン・デ・パルマ監督、アル・パチーノ主演のアメリカ映画です。
1932年に公開された『暗黒街の顔役』のリメイク作品となっています。
脚本は『プラトーン』など社会派の作風で知られるオリバー・ストーンが担当。
未だに根強いカルト的人気を誇る、ギャング映画の傑作の一つです。
上映時間は170分と、比較的長時間の映画となっています。
『スカーフェイス』のキャスト
トニー・モンタナ・・・アル・パチーノ
エルビラ・ハンコック・・・ミシェル・ファイファー
マニー・リベラ・・・スティーブン・バウアー
ジーナ・モンタナ・・・メアリー・エリザベス・マストラントニオ
フランク・ロペス・・・ロバート・ロッジア
オマール・ソアレス・・・F・マーリー・エイブラハム
『スカーフェイス』のあらすじ ※ネタバレ無し
1980年、マリエル難民事件でキューバからアメリカのマイアミへと追放された、
顔に傷を持つ男トニー・モンタナ(アル・パチーノ)は、
難民キャンプでの元キューバ政府職員レベンガの暗殺依頼の報酬として、
グリーンカード(アメリカ合衆国の永住権)を手に入れた。
しかし、小さなレストランの皿洗いの仕事では満足できるはずもなく、
トニーは弟分のマニー・リベラ(スティーブン・バウアー)の紹介を通じ、
マイアミの麻薬王フランク・ロペス(ロバート・ロッジア)の部下
オマール・スアレス(F・マーリー・エイブラハム)から麻薬取引の仕事を請け負う。
コロンビア人との取引現場となっている部屋に到着したトニーと仲間のエンジェルは、
罠に嵌められ金を渡すように脅迫される。
目の前でエンジェルをチェーンソーで切り刻まれながらもトニーは一歩も引かず、
異変を察知したマニーらの助けで窮地を脱すると、
白昼の道路で堂々とコロンビア人ディーラーを射殺したのだった。
この仕事をきっかけに彼はフランクからその度胸を買われ、配下として認められる。
トニーはマイアミの裏社会でのし上がることを決意すると同時に、
フランクの邸宅で出会った彼の愛人エルビラ・ハンコック(ミシェル・ファイファー)を手に入れることを誓う。
その一方で、マイアミでつつましく暮らす母と生き別れの妹ジーナ(メアリー・エリザベス・マストラントニオ)とも再会し、トニーは彼女を金銭的に支援する。
全てを手に入れるため、トニーはさらに大きな麻薬取引へと手を伸ばしていく…
『スカーフェイス』を観る前に!マリエル難民事件と麻薬
マリエル難民事件
映画の冒頭で、キューバの最高指導者フィデル・カストロ議長による演説と、
船でアメリカに向かう人々の映像が映し出されます。
1980年5月に起きたこの事件はマリエル難民事件と呼ばれています。
当時のキューバでは社会主義体制への不満や経済的な理由から、
他国への亡命を希望する人々が多くいました。
そうした状況下、亡命希望者たちがキューバの首都ハバナにあるペルー大使館に押し入り、大使館に勤めるキューバ人の警官が死亡する事件が発生します。
この事件を受けてキューバ政府が大使館から警官を退避させたことで、
ペルー大使館には1万人を超えるキューバ人の亡命希望者が殺到しました。
キューバ政府は最終的に彼らの移民を認め、マリエル港を開放したのです。
マリエル港からは5カ月で12万5000人が出国したと言われています。
カストロはこの事件でアメリカへ亡命した人々を、
自らの体制への反逆者とみなし、革命精神を理解しない「蛆虫」と批判しました。
移民の中には社会主義国家に反対する者や、
犯罪歴のある人々、精神障害者なども含まれていましたが、
その一部はこの事件に便乗してカストロが国外追放を図った人々だともいわれています。
急増したキューバ人移民によってマイアミの治安は悪化したとも言われており、
彼らの処遇は当時のアメリカのカーター政権やレーガン政権でも政治問題となりました。
トニー・モンタナというキャラクターは、
『スカーフェイス』のリメイク元『暗黒街の顔役』の主人公のモデルである
シカゴマフィアのアル・カポネに、マリエル難民事件という当時の社会情勢を反映して作成されたものであるといえるでしょう。
南米と麻薬
作中、主人公のトニーは南米・ボリビアの麻薬王ソーサとの取引を行いますが、
そのシーンでは取引条件を巡る会話がなされます。
ボリビアは現在コロンビア、ペルーに次ぐ世界第3位のコカ栽培国であり、
そこで栽培されたコカの葉が精製され、麻薬のコカインとなります。
コカインの密輸には大きなリスクが伴うため、
様々な密輸ルート・密輸方法が生み出されてきました。
1980年代当時は、メキシコ経由ではなくカリブ海経由が主な流通ルートでした。
現代でもコロンビアの麻薬カルテルは陸海空のありとあらゆる手段を使い、
メキシコ等を経由してアメリカへ麻薬を運び込みます。
船、潜水艦、ドローン、飛行機、地下トンネルと、その手法は非常に多彩です。
流通の過程でコカインの価格は12倍以上とも言われるほどに膨れ上がって、
彼らに莫大な利益をもたらすのです。
麻薬によってもたらされる利益と繁栄を求め、トニーはその力を発揮していきます。
また、ボリビアやペルーなどでは、コカの葉はインカ帝国以前の時代から愛用されています。
コカの葉をそのまま噛んだり、コカ茶として飲んだりすることで、高山病対策になるんですね。
コカの葉からコカインが抽出されるようになったのは1855年の事です。
その約30年後の1886年にコカ・コーラがアメリカで発売されます。
映画を見た後は
映画を見た後に楽しめる知識、関連作品などについて、
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