「警察官を目指している弟に、私の本当の仕事を明かすべきでしょうか?」映画お悩み相談室 Vol.1 ~『男たちの挽歌』~

「私はあまり人にいえない、
いわゆる裏稼業で生計を立てています。」

さて、映画お悩み相談室、
今回のお悩みはペンネーム:潜入捜査さん (31歳・男性) からです。

さっそくご紹介しましょう。

「こんにちは。

私には弟が一人いるのですが、母が早くに亡くなり、父も病気がちだったために、
私が弟の世話や学費の面倒などを見てきました。

そんな弟も大きくなり、警察官を目指したいと自分の夢を語ってくれました。

私も父もその夢を応援したいと、弟を警察学校に通わせているのですが、
1つだけ問題があります。

私の仕事についてです。

私はあまり人にいえない、いわゆる裏稼業で生計を立てています。

いままでは、なんとなく印刷業をしているといったウソをついてやりすごしてきました。

ですが、警察官を目指したいというほど正義感の強い弟には、
やはりこのことを打ち明けるべきでしょうか?

最後のヤマを終えたらこの世界から足を洗うつもりではいますが、
軽蔑されることが怖くて伝えられないでいます。

どうしたらよいか、ご意見がありましたらお聞かせください。」

『男たちの挽歌』的回答

非常に難しいお悩みを抱えている潜入捜査さんですが、
まず「最後のヤマを終えたら」というのは絶対にNGです。

「この仕事が俺の最後の仕事になる」

「最後の仕事が無事終わったら、二人でゆっくりすごそう」

「俺……この戦争が終わったら結婚するんだ」

そうやって最後の大仕事に臨んだ結果、無念にも死んでいった人々がいかに多い事か、
映画『ヒート』でのロバート・デ・ニーロを見ればお分かりになることかと思います。

『男たちの挽歌』でも、主人公のホーは裏稼業から足を洗おうと最後のヤマに臨みますが、
そこで相手方の裏切りにあって、結果的に3年間逮捕されることになります。

その件がきっかけとなって、ホーは自分の父親を組織に殺され、
警察官を目指す弟のキットには「お前のせいで父さんが死んだ」と恨まれてしまいました。

そんな事態を避けるためにも、「最後のヤマを終えたら」などと悠長なことを言わず、
今すぐに裏稼業から足を洗うための行動を起こすべきでしょう。

まずは、あなたのそばに将来出世しそうな弟分はいませんか?

あなたが堅気になってから仕事の話などもちかけられても困りますから、
いたら早々に難癖をつけて失脚させるか、さもなくば消してしまいましょう。

それと、組織内に黒のロングコートが似合うお茶目な親友がいるようなら、
復讐相手にはしっかりとどめを指せと念入りに伝えてあげてください。

くれぐれも足を怪我することのないよう、よく忠告してあげましょう。

また、引退後の仕事についてですが、
タクシードライバーをおすすめします。

免許はとれてもとれなくてもかまいません。何とかなります。

そうした準備をしたうえで、
弟さんに自身のこれまでの仕事について打ち明けてはいかがでしょうか。

潜入捜査さんの苦労や、
これからは堅気として生きていくつもりであることを知れば、
弟さんも理解を示してくれるはずです。

もしどうしても最後のヤマをやり遂げないといけないということであれば、
不測の事態にはできる限りの備えをしてくださいね。

最後のヤマだと思って臨むと、金塊を積んだ車が金塊ごと炎上したり
スーツケースに詰め込んだ金が風に乗って散らばったりといったアクシデントが
往々にしてあるようですので。

『男たちの挽歌』 感想

『男たちの挽歌』は1986年の作品で、
それまでカンフーやコメディが主流だった香港映画に、
「香港ノワール」というべき潮流を生み出した記念碑的な作品といわれています。

今作の影響を受けていることで有名なのが、
ウォシャウスキー姉妹の代表作『マトリックス』シリーズです。

キアヌ・リーヴスが黒のロングコートで二丁拳銃をぶっ放す姿は、
『男たちの挽歌』でチョウ・ユンファが演じているマークの姿そのままといってもいいでしょう。

『男たちの挽歌』は警察官を目指す弟キットのために裏稼業から足を洗おうとする兄ホーと、
そこに絡みついてくる過去の因縁を描いた物語なのですが、

ジョン・ウー監督らしい、なんともウェッティーな演出と惜しみない火薬使いが楽しい映画です。

哀し気なテーマソングが流れる物語パートと、
「ガンガンいこうぜ」なアクションパートが交互に流れていく
1作目『男たちの挽歌』も十分面白いのですが、

個人的には第2作目『男たちの挽歌Ⅱ』こそ見てほしい。

第1作の主人公ホーの師匠として登場するルンという人物は、
部下の裏切りに端を発した抗争によってニューヨークに亡命。

そこで自身の娘が殺されたことを知って精神崩壊するのですが、
その演じっぷりが突き抜けていてとかく面白い。

精神病院で無理矢理飯を食わされるシーンとか、
凍った生肉をかじるシーンとか。

そしてそんなルンの仇討ちのためにホーたちが立ち上がって、
最後に訪れる敵のボスがいる屋敷への襲撃シーンはもはや伝説的です。

何発銃弾を受けても死なない主人公サイドと、
死ぬためにワラワラと出てくる下っ端マフィアとの大立ち回り、
チョウ・ユンファ自身もびっくりの大爆発。

リアリティなんて言葉は、
ここまで突き抜けた映画に対しては意味なんてないですね。

この戦いの異例な終わり方も含め、
やはり『男たちの挽歌Ⅱ』が最高だと思います。

『男たちの挽歌Ⅱ』を十分に楽しむには1も見ておいた方がいいでしょう。

ちなみに第3作となる『男たちの挽歌III アゲイン/明日への誓い』は、
観ても見なくてもどっちでもいいと思います。

チョウ・ユンファが好きならみたらいいんじゃない?くらいでした。

ベトナムの雰囲気が楽しい映画です。

ちなみに、第2作目には『少林サッカー』の監督役でおなじみのあの人が出てます。

いろいろ大変な時代ですが、いつか行ってみたいですね、香港。

そんな『男たちの挽歌』シリーズ、興味のある方はぜひご覧ください。

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